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もうi2iさんぐらいしかないかな……?
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やらない夫と真紅が、小説を読むようです 4.「夏の庭」

目次 現行スレ

153 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:00:18 ID:QCg5cLHs
ということで、投下させていただきます。
BGMはこちらを聞かせていただいてます。
よろしければ…どうぞ。
(問題があれば、すみません…)

http://www.youtuberepeat.com/watch/?v=8K-RqSrkNs8

154 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:00:59 ID:QCg5cLHs

「僕たちだって、昔は少年と少女に過ぎなかった」

    「だが、いつしか時は過ぎて、僕は大人になった」

      ;;⌒  、
   (;;; ,,;;    ヽ、 _,,,...:-‐‐=-..,,,_
       (_,,,  ;;ノ,r'":: ::      ::\,,.....,            ;;⌒  、
          ,,r'":: :: :...     ::: . ::; :::.`'::.、      (;;; ,,;;    ヽ、
        ,:r'::: :: .::: ::      ::    :; ::: .:: `':.、      (_,,,  ;;ノ
      ,r'":::.. ..:: ..:::. ....      :  ::  :; :: ::. ::`'::、_
    ,r'"::::  ...::: :...::: :: ;,,, - '''' ''':‐-,, ,,      ::. ::`'::、_          __,, - ''""
  ,r'"...::::.. ......:::::               " ''''‐- ,..,,,...  __,, -‐- ,... .-‐‐''''"
,r'":::,,,,,, :::::......:::::: ...               _,, - ''" ""'''"" `'' -,..
  :::.....                     -‐"             "'' -‐‐‐-,..,,.
     ::::,,,::;;;;:::::::: :::::;;;;;::::::: ;;:::::;::;;;;::::,:::::;;;;;::;;; :::,,::::::: ::::; ;;;;:::::::;;; :::,,:::::::::::::;;,,,
  ...:::::;;:::::::::::;;;;,::::::::::::::::::::://::::,,;;;;:::::::::::;;;;:::::::: :::::;;;;;::::::: ;;:::::;::;;;;:::;;::;::::://:::::::.::::;;:.......
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WWWwwwjij,,.、,、,,,vWWwjjwvjiiijwwiijijyyywWwWWjjwv,,.、,、,,,jiiijwwiijijyyviiijwiijijywWw
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         「だが、僕は、いつ自分が大人になったのだか、まるで覚えていない」




155 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:01:33 ID:QCg5cLHs

「世の中は本当に、止め処なく流れ進んでいく」

       .;i;、;;:。;:';.
   ,.;i;';.,,;;、;、;;:。;:;:。;:`;,,
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  ;;l, __ ̄/  l, ̄ ̄i;;.  ヽ_ l ̄ ヽ   ) ̄ ,i' ̄ ) ̄ /ヾ  ;;;`;;;`: ヽi!;:;ソ。;、;;:。;: ;:'
____l, ____i__...../_____l, ___,,i__...ヽ__,,,l, __ヽ____l, ____i__... ヽ_,,__,,i__..."'':;::i;:;;`yi!;;:。。;、;:: ;:'
/  ヽ  /  l,   i;  ヽ_ l,  ヽ   )  /.:.Y ヽ   /  /   /"''i;;;:。;:;;::、;;:、;;:。;
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  ;;l, __...../  l,   i;;.  ヽ_ l,   ヽ   ) ;;; i  ヽ  )  / ;;;/  く .:. ;|il;:|
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           '"' "'`'::',:'':';:;          "'`'::',:'':';:;..,"'':';:;.`'::',:'':';:;...,..,
',:'':';:;..,"'`',:'':'`::'::''::',:'':';:;..,"'`,:'':'`::              '::',:'':'::',:'':';:;..,"'`::'::',:'':'`::'::
"'''.''' "'''             ::'::',:'              ':'`'"'

                   「子供の頃は、そんなことを意識せずにいた」

    「何もかもが、当たり前のように感じられていた」

156 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:02:09 ID:QCg5cLHs

「けれども、考えてみるとそれは不思議なことだ」

  「『当たり前』になる前、僕は何を感じていたのだろう」

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ネ仗!|朮k湃漆柎游淼翔 || ̄ ̄||  |        ヽ '^率、    く艸k      `ヽ、      ` ー- 、
什メ从尖淋坿游淼彬矧| ||__||  |= ======\ ヾ來、   `ヾ_夲k ====ヾ ==== = = =
タ乃リミ斗泚漆淼游戔翔 ` ̄ ̄´  |           ヽ、 `'卆k    `丶率      `ヽ、
爻カ||k夭汽淼辧彬辨戔|         | = = = = ===== ヽ、 Yw从YW仆 ィイ ヘYハ   ヘY/
`^Yj|l广´ `¨'`^卅¨^ _,」         L_           、vヘYリ州jハ州リハjKじY州ルイ Yソレ/r ヘWリイ
、wツ|lk__シ艸リy洲ルr_ハ、` ー---一 '´ ハ _、wYレr_、vリ州k災リル艸ハW洲爻W州艸从リ笊州〈ルイ災川ム
゙¨´ "-゙¨'^`^、, `¨'´ ,ト、 ` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´_ノ `^'゙´'`″ `^'¨"´_,^'¨^`"´ ¨^",¨` ^`¨'´ `^'¨"  ^'゙´'`_,
  - `'  、;  `" _, ` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´、_ ‐ ゙ `' 、, ゙ 、;   ‐'  、_,  ‐ `' 、, ゙  、_;

     「『何か』がなくなることを知らなかった頃の僕は、
                  一体、何を考えていたのだろう」

157 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:03:21 ID:QCg5cLHs

「僕は、彼女のことをあまりにも知らなかった」

                     ノレ〉
             rヘy'´ ̄ ̄ ̄ ̄` Y^i 
             } }━━━━━━} } 
               { {    /ハ      { { 
            ノ ノ   人人    ノ ノ 
           _ノ ノ|  /   \ _ノ ノ| 
         r '"´_,.-': :l l    r '"´_,.-': :| 
       { {´: : : : : |__l___.{ {´: : : : :| 
       }_.」: -‐='´    -‐ } }: : :_/| 
      ∠ __ ∠ __∠ __{ {/l」/| 
      |    |    |     } }/: : :| 
      |___丞-〈〉-丞___{__{_ -‐fF! 
      |―|      l-|   |―|     l-| 
      トnイ      |_|   トnイ    |_| 
     〈.人.〉         〈.人.〉 
        l-|               l-| 
       |_|             |_| 

         「だけど」

 「自分自身のことも、まるで知らなかったのだと思う」  


 「そう、僕はまず自分を知る必要があったのだ」

158 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:03:52 ID:QCg5cLHs




    「やらない夫と真紅が、小説を読むようです」 



 
             4.「夏の庭」






                ,.ィ<゙゙>.、
               /,ノ. _人  `ハ
                  ii'  ゙!´  `r‐ヘ !
                 マ、_,ノー-ィ′ /メ
                 ゝ.、_  〉‐タ'
                 `==´

159 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:04:24 ID:QCg5cLHs

「大学生活にも慣れ始めて、秋の気配も感じられるようになったころだった」

     「突然、実家からかかってきた電話に、僕は随分と驚かされた」


.                         _______
                       /    \,-、__
                     /_,ノ  `⌒ ヽ.,__ ヽ
                     | (● ) (● ) ,.! ┴-'、 えっ…家を売るって?
                     |  (___人___) 〉-‐‐´ l
                     .|       u 〉--‐´ l
                      |        iヽソ   l
                     Λ      ∧`;"   '、
                    __,. ィ仏 ___、___ ィ_ノヘヽ、 _,.‐ー、_
              _,. -= ''' .:::::::}:::::::::::::::::::::::/::::::::>´..:::::::.. ヽ`.、
            ノ´ ...::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〈 :::::::::::::::...\::ヽ
          / ...:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::', ::::::::::::::::::.. ヽ:}



  「聞けば、道を拡充するための工事区域に重なるため、

              立ち退きを要求されたということだった」

160 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:04:57 ID:QCg5cLHs

「連絡をくれた母が言うには、

   近いうちに家を明け渡すという」

            / ̄ ̄\
            _ノ ヽ、_   \
           (= )(= )  |  …いくらなんでも、急すぎるだろ。
          (__人__)  U  |
            l` ⌒´    |
.             {     U   |
             {       /
       _. -: ´∧ _,__  _.へ` 、
      r<....::::::::::ゞ::::::::::::r'    \ :\_
    /.::::::l:::::::::::::::::::::::::::::L>、    >ヘ::ヽ
    | :::::::ト、::::::::::「|:::::::::::::::::::`ー/:::::::::V::|
    〈:::::::::::::::::::/へ、:::::::::::::::::∧::::::::::::::V }
    /::::::_ン´「 ヽ`ヽノ:::::::::::::::::::Λ::::::::::::::ヘ}
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

   「だから、思い残すことがないように

     一度帰って来ないかという話だった」

161 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:05:37 ID:QCg5cLHs

「僕の実家は、片田舎にある」

  「下宿先からは電車で四時間というところだ」


                    /) ̄ ̄\
                  /∠___ ヽ、,_ \
                 / / ,-イ)(= )!!! |
                 l / /(__人___)   |  はぁ…
                 l   ', `⌒ ´  u |  そうか…
                 ',    ',      |
                  j    ノ      /|_
                _∠⌒ヽ j, _、___ ィ/::\__
            ___/ ...:::::::::::ヽV ̄ ̄ ̄:::::::::::::::::...´´''' 、、、 _
          /::::/ ...:::::::::::::::::::: 〉::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..... :::::..\
         | ::/ ...:::::::::::::::::::::::: /;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: /::::::::::::::: l


 「もともとは母方の祖父母が住んでいた家で、

   祖父が亡くなったことを契機に、僕たちが祖母と同居する形で移住したのだ」

 「そのため、母が本当に言いたかったのは、

    祖母との思い出の場を見納めないか、ということだろう」

162 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:06:11 ID:QCg5cLHs

「そんな僕の気が重くなったのは、
  彼女に狼狽しているところを見られたから、というのもあった」

                         ,.ィ≦三ヽ、_
                 ,..::'´:._j三三三ニ廴
                 /:r'二´三三三三二}
                 /:.:.:.:.)三三三三三三く_
      rー-v一'⌒ヽノj:.:.: , イ  ̄ ̄` <三三三ニ)
      |匸7:.:.:.:.:.:.:/_7:.:/:r┘/        ヽ、三〔_
    /人/:.:.:.:.:.:.ハ7:.:.:.:.:.〈  ′     、   ヽ三フ
    \V{:.:.:.:.:. /ニ7.:.:.:.:.:_:ノ, l  |    、ヽ  ヽ ∨ 〉
     └う:.:.:.:.{三{:.:.:.:.:.:ヽ l | lト、\ヽ ヽ` 、`、Vニヽ、
      / {:.:.:.:.:.|三|:.:.:.:.r‐'∥ l | ',丶 l 川 l | l | !  ヽ\   …なにかあった?
    // ∧:.:.:.:.l三l:.:.:.:ヽ |ヽ」斗-ヘ }ノ,エZ{ノ/リヘ\ \ヽ
.    | l / ヽ、:.:Vニヽ:.:r个ト,ィfl圷  ` 化ノケハ  `ヽ>└′
   l|,'   「ヽ{lHlリ:{ 小 ` ゞ ′    八ヽ\
   |V  ,'  l| | ` <7/ | lヽ、    , .′, 仆 ヽ \ヽ
    `7 /  ,イ |    l├ヘヽ―ヘ、__,.:'⌒ヽ `、`、 ヽ\
    /   / ||   | |:./ヽ\::.::rヘ::.::.::.::.::\ヽ \ \ヽ
   ,' ′ / /|| /ヽ\::.::.::.) ){廴r-、__::.:rく  \ ヽノ /
   / /    /ハ !/:.:.:._:_;>=≠-‐、::.f‐ミ ヽV  \ } 〉 /
.  / /    / 'rヘヽ:.:.:. ヽ二ニ==、 }:「`{  ,ゝ、_V_/∠_


            / ̄ ̄\
          __ノ ヽ、,_  \
          (●)(● )    |
          (__人___)    |  いや、昔、ばあちゃんと住んでた家を売るらしくてな。
              |` ⌒´   u. |    いい機会だから、実家に帰らないかって言われただけだろ。
           |        |
           ヽ      .イ
          __「ヽー'ーー"/7_
    _, 、 -― ''":::\::: ̄ ̄:::::/::::::ヽ、
   /;;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`'ー、
  丿;;;:::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ、
  i ;;;;;:::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'、:::: !
 /;;;;;::::::::::::::::!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: i:::::: |
 l ;;;;;::::::::::::::::::|;;;;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: |:::::::: |

 「彼女の不安げな顔を見ると、
   不安にさせてしまって申し訳ないという気持ちが出てきた」

163 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:07:10 ID:QCg5cLHs

「僕はそんな不穏な気配を振り払うように、言葉を探した」

                   /  ̄ ̄\
                _ノ  ヽ、_   \
               (⌒)(⌒ )    |  まぁ、確かにいい機会だし、里帰りとするだろ。
               (__人___)     │  こうでもしないと、帰らないだろうし。
                   '、'ーー´   'J |
                |        |
                    ヽ 、     イ
                ィヽ-ー ≦ノ7
          _, 、- ― '´ヘ:::::::::::::::::::::::::ト、__
        /..::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.... 、
       丿;;;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..ヽ、
       / ;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'、:::: !
       /;;;;;:::::::::::::: !::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: i:::::: |
     / ;;;;;:::::::::::::: /;;;;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: |:::::: |



   r‐く二ニ:/i:i:i:i:i:i/  V^’           ヽ Ⅶ: : :己
.  /:i/[_: :|i:i:i:i:/、yz'′                Ⅵ: : :.__7
 /:i/ lしんく|i:i:i:Yrュヲ       .l!    l|  ', ' |: : :_:∠,
.〈:i〈  || 己 {i:i:i:i|′   ! l  | l!  l| l .lLi! | l! l}: : _く
 \\!!   し|i:i:i:i|   | | |  | l!  l| l .i i! i l| l|__ノ
    ̄|L__ムスi:i:i:i:{l  | | |/| l!  l| ||」zテメ.l l| l!トミx7 そうね、きっとその方がいいわ。
    | ̄|i:|i:|マi:r=Ⅶ i ./|  | iヾ/!ノ fz リ |从ノマヘⅣ
    |  |i:|i:|ミム泌リヾ .l ;z云气    `¨ "| | |  |   もうすぐに出発するの?
    | /i:{ゞ\ゞ=イ| l |《Vzツ'       八.| |  |
    | : ̄|  ̄ゞ≠{  |  ""   _  '  /  l| |  |
    | i  |    x≧l  |> _       イ三ヲ{ |  |
    | | | ヘ  ∨i:|  |≦三三r≠くヘ≦ 三∧ ',. |
    | | | ', ヽ/:ヾ|  |三三三いゞソメ《 三三∧i |

「そんな僕の気持ちを汲んだかのように、
            彼女は表情を緩めてくれる」

164 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:07:47 ID:QCg5cLHs

「僕は、彼女が何を言おうとしているのかもわからず、
     とりあえず、自分なりに考えた予定を伝えていた」

                         / ̄ ̄ \
                      ⌒´ ヽ、,_  \
                     (●).(● )    | いや、次の連休を使って帰るだろ。
                     (__人___)     .|
                          '、           |
                         |        |
                     ,. -ー._i-、_     /l、
                 /...::::::{. i_ {_γ、__ ∠ノ::.}- 、_
                   ./:::::r/::::{. i_ l_ i_ {::::::::::::/::::::::::::::::..\
                  /.:::::::::::::::} .i _i l_ {:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..ヽ
               /.:::::::::ノ::::::r "~'ヽj_ {:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::. ',
              /.:::::::::::>ー、j.‐-  / {::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: }
             /.::::::::::::::トヽ、⌒ γ  i::::::::::::::::::::::::,':::::::::::::::::::: i
            /.::::::::::::::::::l::::::::ゝ、 {   ソヽ、:::::::::::::::} :::::::::::::::::: i
           /.::::::::::::::::::::::l:::::::::::::`ト、__/::/:::.\::::::::::::i :::::::::::::::::: i
             /`-::::::::::::::::::/l::::::::::::::::::`,ー::::::::::::::::::::..ヽ::::::i ::::::::::::::::: i
          / .::::::::::::::::::::/ l::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::::::::..、::::::::::::::::::::: i

          )): : : : : : : : : , .----<: : : : : : 八_
       r'´: ̄: : : : : : : ;.'´          ¨ <: : : : : : ヽ
      {: : : : : : : : ::/〃               ヾ: : : : : :ハ
       ゞァ: : : :.:.:, ' /   ,ィ      ヽ    ∨: : : : ::ヽ
     __ _ノ:\: : :/  ,'  〃  i |   i  l     ∨: : : : ::ハ
    /}: :ヽ: :.:.:∨  ,  / il  | |   |   |   i   ∨: : : : :.i
.   //ハ: : : \:.;'   i  /i .:il  | |   |   |   |   ∨: : : : !
   // /¨):、: : :.i  :| :厂! :从 . | |   :i|   |   |  i  ∨: :rチハ なら、行く前に貸したい小説があるの。
.  // //ノ: : ヽ: |  从ィ=ミ、 ', ハi   :リ  !  リ ,'  爪: : :i ∧
 // //(: : : : : :| 乂{トftイハ ヽ ノ从_./j  /  ./ ,'  ,ィ川: : / ∧ 良かったら帰省中にでも読んで欲しいわ
.// // j |ー、:.:.|  Tミ弋zツ    ィ云ヌァ / . / /: ! :!:.イ   ∧
{_{ .//!  | |  ヽ| 从""        {辷zシ 》彡 / /:ノ| / /! ',
    ノ  | |:    |  爪       '   `¨,,,,(( イ._/ノ  ,' ,' |  ',  …帰省前に読むのは、ダメだからね?
  ,'   | | ,ィチ| ,'ノ=\  `ー    ,イ | | |  ̄   ,' ,'  ハ  ',
  ,'   | |ム:::: ;' ,'_::-== \ __ ........z≦::::|::j j jト..、   , ;:    ',  ヽ
. /    升::::::::/:/::::::::::::::::__:ノ三入:::::::: : |::| | ||::::::::>{ {     ヽ  `
/    ;八:::::/:/:::::::::::::::::::}-くマ ノハ:::::::: |::| | ||:::::::::::/| |     \
.    /  Ⅳ:/:::::::::::::::::::::{   ヾソ 人::::::::|::| | ||::::: : / | |
..    /  / /、:_:_:_:_:_:;;≦::>元テ::::::`ー-|::| | ||::: : / | |

 「すると、彼女が僕に小説を貸してくれると言ったのだ」

   「きっと彼女なりの考えがあるのだろうと思い、僕は頷いてみせた」

165 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:08:32 ID:QCg5cLHs

「結局、彼女は、帰省する前日に小説を貸してくれた」

    「どうしても帰省中に読んで欲しかったらしい」

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::::::::::     // | .\     (⌒..:. `):: ):::::::::::::::::::::::::,'⌒ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::(:::.  (::. ) ):::::::::
:::::::::   / / . |  .\    >:::..  ... )~、    ,(:::...  )、    ,'⌒:::.(::::,.  /::ヽ :::::::
:::::::::::::             ::::::::: ITTTTTTTTTTTTTI  _|_     ______    |FF|ニ|
    _____________           /| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~! iニi.     | FFFFFFFFF |  /二ニ,ハ
    . |IIIIlミ|三三|゙ ____|ミ| LL LL LL LL LL | iニi,___| FFFFFFFFF |  |EEE|日
 ̄ ̄|!|IIIIlミ|三三| |田田田田|ミ| LL LL LL LL LL |ll.|__|.|==/\==|.| ̄ ̄|「| ̄ ̄
lllllllll |!|IIIIlミ|三三| |田田田田|ミ| LL LL LL LL LL |ll.| ロ ロ 「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | 田 |「|  田
 ̄ ̄. |IIIIlミ|三三| | ̄ ̄: ̄ ゙̄|ミi LL LL LL LL LL |ll.| ロ ロ .|.l⌒l l⌒l l⌒l l´| |    |「|
  . . . |IIIIlミ|三三||    :   :゙| | LL LL LL LL LL |ll.| ロ ロ .|.l⌒l l⌒l l⌒l l´| | 田 |「|  田
  . . . |IIIIlミ|三三||    :     :゙||LL LL LL LL LL |ll.| ロ ロ .|.l⌒l l⌒l l⌒l l´| |    |「|
 。___<> ___<>____<>____<>_____<>___ 三 ≡─
  |日= -P:: ̄Jr::::ii 田┌┐田 田┌┐田| 田┌┐田 田┌┐田| 田┌┐田  三  ≡─
  |)_l|_ヽ_;;;;;;;;;;;|______,| |,|______.| |,|__,,,,|______,| |.|______.| |,|__,,,,|______,| |,|_;:;:_三 三 ≡─
   ○◎∪○○─○∪◎○~○○゙────"◎○~○○゙────"◎○~○○─
╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂╂



    「僕は電車に乗って、誰も座らないシートを占有してから、
       彼女の意に沿うように、小説のページをゆっくりと繰った」

166 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:09:01 ID:QCg5cLHs

「彼女が貸してくれた小説のタイトルは、
          『夏の庭』というものだった」

       ,";'.:.:;”:;,`:;,':,”:;:;.,:;.:;'.:.:;”:;
       .::;.:".:;.:'"゙:.:゙,:;、,"ノ'.:;ノ'.:.:;”:;,`:
       ..:;,`ヽ|/:;,':,:;.,:;.:∨//.:";'/.:.:;”
       .:;.:'";|'ノ.:.:;”:;,`:;:i;|.':,”ソ::.:゙,:;、,". : .: . :.lニ|: . . : . : . :
      ,,`:;\i;|i;/:,:;.,:;.::i;i;/'.:.:;”:;,`:;,': :. . :. .[]n「「 .|ニ .:__... -
    "".:::;.:".:i;i|.:';'.:.:;”:|:i|.;,`:;,':,”:"゙:.:゙;'_   __.:.__,,,,-‐‐ ゛ .: :. .: . :.
     ".:;,`:;,i;;i|;'.:.:;”:;:i;i|.,/`:;,':,”;”:;,`:;,  -ニ二_ :.: .:. .:. :. : . .:
     ,,.:;'.:.:|iii|;”:;,`:;,'|i;i|.:,”//:;.:'"゙:.: "'‐..._―、_^ー-‐‐、___  ;::. :. : .
     .:; .:ヾ'|;|'ノ.:.:;”:i;i|i:;,/`:;,':,”::. ;:   -  _ヽ.   ̄^~^^ー―ニ___..._
     .::; .:".:i;i|.:';'.:.:;:i;i||”:;,`:;,':,”:"゙:::-_  =- -ヽ.  :::li::.:. .:l
      .:`:;,i;;i|;'.:.:;”|:i;i|.:;l:;.;"~‐     -  ̄,λ`ー-、..__  : .: . : .:
   "   ;'.:.:|iii|;”" :i;i|.|i;,`::;;"::::  =―  _,,-'″`ヽ...: .: .: "`ー、__
     " ;;:;i|,i;;ii:i;;i:i,`:;;,`:;,':,__      ,,‐'"~:..: .: .:.. ,;`-,:: ;: ;: : ; :; ::.:..:.: ̄
   ._,,,.,,,,-‐'"~ ―=-   .    ,,‐'"  :.:. :. :. :; :;::. :. `ー-,.__. :. :..: .: .
      ニ ―  =―  _  ,,'   "..: .: .:. :. :. : .. :.: .: . :. : : .:."`ー-, . :
   ―  --― _   ̄-  ;;"  .: .:. .: . :. .:.:. : .: . :. : .: . . . :. : .: .: .: .: .

        「三人組の少年が、ひとりの老人と触れ合い、成長する話」

「それだけを聞くと、ありきたりな童話のようにも聞こえる」

    「だが、この小説の少年達は、老人が『死ぬとき』を観察するために
       老人を監視していたのだから、すこし毛色が違ってるようだった」

167 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:09:29 ID:QCg5cLHs

「僕は、この少年達の老人と触れ合う動機が、
     少年期というものを巧みに描いていると感じた」

          /!
\ {      //i   _   _
  `xーrーr-'ー'┴,ァ'/" ̄  }
  i {')}  ト-ァ'"~ ,.〃_,.--'''"
  ヾV>'ゞ┴、//  ̄ _フ
   _,/"´  ̄`ヽ.ニ_" ̄
            ヾ,,`            |
           l             ,.-.、
           ,゙-‐r‐‐--;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:/;;//‐‐;;;;;‐‐;;;;;‐ 、
        ,‐i-0=i::::::.../、;;; ;;; ;;/,'ミ/:/;;;, ::;;;;, ::;;;;;, )
         / ヾ!_,l_゙゙゙ ノヽ`';;ー/ /ミ/::/-,-,-,-,-、‐‐‐''´
          /`゙''ー===<.,,ノ.シ-/'-'-'-'-'- '
       _,.-‐''´        \,,_   ''ー

   「年頃の少年少女は、時に残酷な形で生き物と触れ合っていく」

 「そして、そのことをいつか後悔し、命の重さを理解するときが来る」

168 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:09:58 ID:QCg5cLHs

「それは、僕も同じだった」


            / ̄ ̄\
          /    _,.ノ ⌒
          |    ( ー)(ー)
          .|    (___人__)
           |         ノ
           |        |_,-‐、_ -、
          .人、      厂丶,丶 v 〉
        _,/::::ヽ、.,ヽ., ___,く_ソ    __ノ
 _, 、 -― ''"...:::::::::\::::::::::::::::::::(    〔"ニ‐-、
/.::::::: ':、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::r  /⌒ヽ:::::: )
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V/..... ̄ ',::::|
:::::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〈 :::::::::::::::... ',::i
:::::::::::::::!::::::::::::::::\:::::::::::::::::::::::::::::::ハ ::::::::::::::::::. ',


           
        「無邪気さは小さなシコリを残して、
                  どこかに消えていってしまう」

169 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:10:31 ID:QCg5cLHs

 「小説自体は、簡潔にまとめられていて、あっという間に読み終わってしまった」

「そして、作中の少年達が老人と触れあい、
     少しずつ心を形成していくのを見届けるころには、

..,,,
 : ゙゙"'ー-、,,
 : : : : : : : `゙'''ー-、,,,、
: : : : : : : :       `゙'-、
 : : : : : : : :        `ー--,
     : : : : : 、: .      : : ゙ヽ、
      ::;.:".:;.:'"゙:.:゙,:;、,"'.:.:;,`:;,':,:;.,:;.:゙゙゙゙'''''''‐- 、 ,,,,,_
::;.:".:;.:'"゙:.:゙,:;、,"'.:.:;,`:;,':,:;.,:;.:::;.:".:;.:'"゙:.:゙,:;、,'.:.:;,`:;,':,:;.,:;.:`゙''ー-       _,,.--ー''''''"゙
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''"" ゙゙̄"'''''―-
''"''''"""''"""'''''"""''""''""",,,,-‐'゛'''''"""''""''''""''"''''""''"""'''''"""''""゙''、,,"'''''―--'''""''"''''"""''"""''''
..:ヾ:ヾ.ヽ.:ヾ:  ヾヾヽ.:ヾ ...ヾ.,. .ヽ.:,,,,-‐'゛,,,,-‐'゛ヾ:.,..ヽ.:ヾ .. ヾヾヽヾ. ヾ .. ヾヾヾ``'‐.``'‐.、ヾヽ..ヽ.:ヾ .
  ヾヾ      ヽ.:     ,,,,-‐'゛,,,,-‐'゛  ヾ ..    .,.ヾ.,.   .ヽ    .:ヾ:. ..ヽ``'‐.、``'‐.、    .:
  ヾヾヽ ヾ      ,,,,-‐'゛,,,,-‐'゛ :.,..ヽ.:ヾ .. ヾ      ヾヾヽ ヾ       ヾ.,. .ヽ.:ヾ:
     ヾヾヽ ヾ,,,,-‐'゛,,,,-‐'゛      ヾヾヽ ヾ         ヾ::.ヾヾ
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''""
;.:".:;.:'"゙:.:゙,:;、,"'.:.:;,`:;,':,:;.,:;.:';';';::;.:".:;.:'"゙:.:゙,:;、,"'.:.:;,`:;,':,:;.,:;.:;';',: '::;.:".:;.:'"゙:.:゙,:;、,"'.:.:;,`:;,':,:;.,:;.:;';';.:".:;.:'"゙:.:゙,:;、,"'.:.:;,`:;,':,:;.,:;.


                 車窓から見る景色が、懐かしいものに変わっていたことに気づいた」

170 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:11:16 ID:QCg5cLHs

「この町を離れたのは、ほんの数ヶ月前のことだったはずだ」

   「それなのに、僕はまるで数年ぶりに帰郷したような気持ちになっていた」

                   / ̄ ̄\
                 / _ノ  ⌒ \
                 | ( ●) (●) |
                . |   (__人__)  |   懐かしいだろ…。
                  |   ` ⌒´  |
               _入 |        }人
             , イ  / ヽ       }  l\
           /    |  |ヽ     ノ!  |  ヽ.
           | ヽ、  |  .V::::` ー ':::::.;.  |  ∧
―――――――「´  `i. /__,厂V::::::::::::::::.:/ィヘ」  /  ー―――――――
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ /     | ´     ヘ、::::::::::/.    ,' ,ィニ`ヘ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         / ____   |        \_/    r/   ∧
.        〈ィ´  `ヽ」j       「        {以イ´ ̄`ヽ、
        r'       `¨¬-、_   |   r‐‐-ィチ´       〉
        `ゝュ,,__        `¨亠'"´ ̄ ̄ヘ   __,ィ=≦ヽ
       f´ i . . .:`寸=ー----ュ、,___ ,、 , , 〉ャ'´/.: : : i  ',
――――‐┤ :i . . .: : :} \   /    ,斗ク,々y′ ,.′ : : : :i::. ∧ー―――
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄!  :i . .: : : ::V ソゝヘ/   T′`^__ソ.: : :/  .: : : :i::. : : :, ̄ ̄ ̄ ̄
        〈.: i.: :i . : : : : :} '.:: : /    ト、,f壬イ.: : :,ハ  .: : : ::i:. : ::/
        .V .:: i . : : : ::iy.: : :ハヽ __ィニ′.,'.: : : : : : j .: : : : i:. : :{
         ’.:.::i  . : : : l.: : : : :`^´.: : : :,イ/.: : : : : : :l .:,'.: : :i:. : :|
         |.:.:.i  . : : ::|.: : : : : : : : : :.,'/. : : : : : : :i /.: : : i:. : ;'
          .i.:.:.i  . : : ::|.: : : : : : : : .::′. : : : : : : : :l /.: : : : i:. :;'
______|.:.:.i  . : : ::!ゝ __________/l/.: : : : ::i.::,′_____
―――――一|.:.:.j  . :ヽ├―――――――――┤.: : : : : !〈ー―――――‐
         ./.:.,'__, . :ュ_.∧             ,ノ.: : :,: :ュ_:∧
        {.:.:,≧--‐‐'ニ 〉            .〈.: : ;イ-‐‐.: :.;}
         \r‐-' `ヽ,'             .}.: : :≧、.:イ
        , イ-‐マ、__,ハ              〈.斗ァ´ ̄`L
       仁二ニニヽヾY′             {__yイ,仁二ニム
―――――ゝ====ー┴―――――――――┘--≦二二ニー――――

             「読んだ小説の余韻に浸っていたからかも知れない」

  「僕は読み終えた小説を手に、自分の少年時代を思っていた」

         「そこから、突然に現実に戻るのだ。これは、数年をかけた旅に近い」

171 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:11:43 ID:QCg5cLHs

「数ヶ月ぶりに帰省した僕は、
   母の小言をそこそこに聞き流し、かつては自分の部屋だった場所に入った」


_| | |______,|| |:|___________________________
 ̄| | |______,|| |:| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄| | |───||l──‐|| |:| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | | |      ||l.     || |:|
  | | |      ||l.     || |:|  ┌‐‐l]‐┐
  | | |      ||l.     || |:|  | ::.。゚o.: | __
  | | |      ||l.     || |:|  │ ,;ゝ;:'│| 11.|
  | | |      ||l.     || |:|  └――┘|;;;;;;;;;;|
  | | |      ||l.     || |:|          |''''''''''|
  | | |      ||l    0|| |:|         ̄ ̄
  | | |      ||l.     || |:|                                     _
  | | |O     ||l.     || |:|                                        |\_
  | | |      ||l.     || |:|                                        |  |
  | | |      ||l.     || |:|                                        |  |
  | | |      ||l.     || |:|                                        |  |
  | | |      ||l.     || |:|                                        |  |
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  | | |      ||l //                                             \|_
  | | |      ||' /
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/            l二二二二二二二二二二二二ニ二二二二二二二二二二二二l
                | |l                                   l | |
                |_,,ソ                              !,|_,ン


                  「そして、荷物を適当に投げ捨てるように置くと、
                          広いとは言えない家の中を歩き回る」

172 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:12:08 ID:QCg5cLHs
                      カビ
 「生前、祖母が暮らしていた部屋は、黴のにおいがした」

   「座り手のなくした椅子は、所在なさげに部屋の隅に鎮座していて
       どこか寂しそうにも思えた」

「僕はその椅子の背もたれを抱くように座って、思考にふける」


                       __
                  /    \
                     | \_    .|
                     | (●)   |   …。
                 __(人__) __|,二ヽ- 、
              ∠爪∠!´ ̄    .`l    \
                  (___∨  ヽヽ、/      ∧
               ∨  ∧ .`ー ‐ヽ、´ヽ      ∧
               ∨  ∧     \ ヽ    ゙∧
               ∨  ∧      .∨ |      ∧
                     ∨  ∧      ) `ヽ     |
                     ∨  ∧       /_   .|  ゙\|
                   _∨_, -`─::´ ̄::::::\/.   \〉
                  /´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|_  \/
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.    \   l `ヽ、__」::::::::::::/    .| | |           | | |
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                        ̄.            ̄


「――この頃には、彼女が『夏の庭』という小説を
       僕に貸してくれた意味が分かった気がしていた」

173 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:12:42 ID:QCg5cLHs

「小説の少年達がそうだったように、
  僕たちもまた『喪失』を獲得しなければならないのだろう」

     「僕たちは喪うことを積み重ね、成長していく」


                ̄   、
            ´        \
     /              ヽ
      /                ノヾ
    '            ー ´  ヽ
    l              / _  ヽ
.   l              l / \ l  ・・・こんなにも椅子は小さかったのか。
.    l              冫.   く   まったく、ばあちゃんは小さすぎだろ。
   l               l    ノ!
   l               `ー‐ f r'
   l                  ノ'
   !                     /
   ,'                   /
 ̄ `ー -               /
        `  、        /
:.:.:.:.:.:...        、      /
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..      .:.:ヽ _ ´
ー- :.:.:.:.:.:.:.:..   ..:.:.:.:.:.:ヽ
    ` 、:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
       、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\
       ..:.`:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
      ..:.:.:.:.:.:.:.`:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./
                    


  「だから、喪うことを『過不足なく』食べつくさないといけないのだ」

「彼女は僕にそう言いたくて、僕にこの小説を貸したのだろう」

174 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:13:07 ID:QCg5cLHs

「祖母の部屋の柱には、無数のマジックの跡が残っていた」

 「今でも覚えてる。たった一人の孫だった僕は、本当に祖母に愛されていた」
                                _┌┐___|_|:|
                              |\└┘ (二)  \  |::|
                              |  |[l二二二二二]|  |::|
                              |  ||______||  |::|
                              |  ||______||  |::|
                              |  ||______||  |::|
__________________|  ||______||  |::|
                                \|[l二二二二二]|  |::|
                              ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\|::l、
                                         \\
                                         \\
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\                           \\
                        \                           \
                        \
                        \
二ニ二二二二二二二二二二二二二二二l
                        l | |
                       !,|_,ン

 「祖母は僕の身長が伸びると、柱にその背丈を記録して微笑んでいた」

  「僕の背が祖母の背丈を越えてからも、祖母は椅子の上に立って、柱に記録を刻み続けた」

   「だが、柱の記録は、僕が十四歳のときで止まっている」

175 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:13:32 ID:QCg5cLHs

 「そこで、僕はくだらないことを思いついた」

   「彼女と過ごすうちに、僕もいたずらっぽくなっていたらしい」

                / ̄ ̄ \
               ⌒  `⌒  \     v-,
            ( ●) ( ●)   |     | r  たしか…あっただろ。
             (__人___)     |      | |   このマジックだ。
             '、        |     | |,.-、.
          ,,. -ー|         |ヽ__/ ̄ヽ` r´
         / .::::::、::|       /ィ::::〔 ̄ ̄ `' ト-、
        l :::::::::::::::::ヽ__、____,. ":::/::::〔 ̄   l:::. ヽ
        」 ::::::::l:::: ::::::「二二::::/ :::::::ヽ y   l::::::. ',
        l :::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l    l:::::::: i
       / ::::::ー-ミ、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ_/:: L::::|
      / :::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::く::::::::::::::::::|::|
     / ::::::::::::::::::::/ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::「 ::::::::::::::::::||
    / :::::::::::::::::::/  \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::V ::::::::::::::: |


    「僕は鏡台の中にしまわれたマジックを取り出し、
        柱に背中を預け、手探りで線を横に引いた」

176 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:14:07 ID:QCg5cLHs

「久しぶりに使われたマジックのインクは、かすれていた」

  「それでも」

 「気にせずに、僕はかすれた線の横に自分の名前と年齢を書いた」

                      /´ ̄ ̄ ̄ ̄ `\.
                          /             \
                         /                  '.,
                         |  , ´ ̄` 、  ,´ ̄` 、  |
                         |                    |  これでよし、だろ。
                         | ;;;( ● ) ノヽ ( ● )   |
                         |  .´"''",.     "''"´   |   我ながら、大きくなったもんだ。
                         |. "⌒(    j    )⌒゙ l
                         |     `ー-‐´`ー-‐′   /
                    .丶     ` ⌒ ´      /
                    ヽ               /
                     ヽ           /
                       /! ゝ    _   / \
                       /  {               !  \
               _,. ‐7′  l             !     `ト-  .._
          ,. -‐  ̄   /      l               ,'     ヽ    ̄ ‐- 、
          /        /      l ̄`丶    '´ ̄/    _  \      \
       , '  i        / _,. -─-ヘ        /-‐  ̄   ̄``          ヽ
        /   |:.      ̄         ヘ         /  . ..:/            .:i    ',
.      /     !:. .            丶.   ヘ       /  ..:;. ′         ..::|    、
     /      !::.:..,'  .       :、:. ヘ.    / o            ',  ..:.::!     丶
.    /      !::.:!   :         :. ヽ:...ヘ. ,': ./     .:  .       i ..:.::'      ヽ
   /        '、:!___,;_,..  --─-:. ¬ニ Y::../─---‐::¬‐::─:-‐-:- l..:.::;'       `、
.  /         :!  ::    : :    : : :   ∨ o    .:  .:  .:    :. !:.:/        ',
  /          |  ::       .   . . :    {.       :  :     :  !:'            i
 {           |   :                |          .       :  j              〉
  `ヽ          |  :                |                    |            /

  「言ってしまえば、これは僕の、ただの自己満足だ」
 
    「祖母が見ているはずもないから、僕による、僕のための記録だった」

177 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:14:34 ID:QCg5cLHs

「それから僕は、何気なく一番下の線から順に、
                    指でなぞってみた」

                ̄   、
            ´        \
     /              ヽ
      /                ノヾ
    '            ー ´  ヽ
    l              / _  ヽ
.   l              l / \ l  本当に小さかっただろ。
.    l              冫.   く
   l               l    ノ!   こんな、だもんな。
   l               `ー‐ f r'
   l                  ノ'
   !                     /
   ,'                   /
 ̄ `ー -               /
        `  、        /
:.:.:.:.:.:...        、      /
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..      .:.:ヽ _ ´
ー- :.:.:.:.:.:.:.:..   ..:.:.:.:.:.:ヽ
    ` 、:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
       、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\
       ..:.`:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
      ..:.:.:.:.:.:.:.`:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./

 「指は滞ることなく、ゆっくりと柱の上を滑っていく」

   「そのたびに、僕は祖母と、幼かった頃の自分を思った」

178 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:15:10 ID:QCg5cLHs

 「この場所には、かつて彼らが居た」

   「優しい老婦人と、無邪気で、無知な子供」

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    | l l||      ||      ||      ||      | | |
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  「両親に怒られた子供を、老婦人は慰め、その成長を見守った」

「子供はその愛を『当たり前』のように受け止め、少しずつ背を伸ばしていった」

179 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:15:39 ID:QCg5cLHs

「だが、もう彼らは居ないのだ」

 「もう二度と帰らない場所まで、行ってしまったのだ」




                ̄   、
            ´        \
     /              ヽ
      /                ノヾ
    '            ー ´  ヽ
    l              / .,.....、ヽ
.   l              l {::::::} l
.    l                   と.ー .く
   l              〃    .ノ!   …ほん…とうに…
   l             八`ー‐_f r'
   l             / l}    ノ'        小さくて…大きくて…
   !               !  ハ.  /
   ,'            /  | .i ./
 ̄ `ー -         ι  i ! /
        `  、        J
:.:.:.:.:.:...        、      / 。
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..      .:.:ヽ _ ´  o
ー- :.:.:.:.:.:.:.:..   ..:.:.:.:.:.:ヽ
    ` 、:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
       、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\
       ..:.`:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
      ..:.:.:.:.:.:.:.`:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./




         「その事実は、僕が成長したことを示している」

  「けれども、その喜びと同じだけの悲しみが、僕の中から湧き上がってきた」

180 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:16:12 ID:QCg5cLHs

「あふれ出した涙は、しばらく止まらなかった」


  「それを止める必要がないことが分かっていたから、
               僕はひたすらに涙を流し続けた」


   !                  し   /
   ,'                   /
 ̄ `ー -               /
        `  、        /i!
:.:.:.:.:.:...        、      /. i!
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..      .:.:ヽ _ ´   i!
ー- :.:.:.:.:.:.:.:..   ..:.:.:.:.:.:.ヽ    。
    ` 、:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ   ゚
       、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\
       ..:.`:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
      ..:.:.:.:.:.:.:.`:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./



  「僕はこの瞬間、明確に何かを喪うことを知ったのだ」

「喪失の裏には、喜びも悲しみも、同じだけ混ざり合ったものがあった」

181 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:16:47 ID:QCg5cLHs

 「それから、僕は二日ばかり実家に滞在し、
           三日目の朝に帰ることにした」

                |:|:.:.:.:.:.:.:.:.:...   | | |   | |:.
                |:|.:.:.:.:...      | | |   | |:.:..
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   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
                          \


 「いつまでも留まれたら、どれだけ良いだろう」

  「だが、そうもいかない。僕にも生活があった」



「僕はこの帰省で、何かを感じることが出来たように思った」

  「そして、そのきっかけになった小説を貸してくれた彼女に感謝した」

182 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:17:22 ID:QCg5cLHs

「駅のホームに居たのは、僕一人だった」

             //;:;;:;;:;;:;;:;;:;;:;;:;;:;;:;;:;;;/彡;;;;;;
            //;:;;:;;:;;:;;:;;:;;:;;:;;:;;:;:;/彡彡彡;;;
           l/;:;;:;;:;;:;;:;;:;;:;;:;;;:;;/彡彡彡彡;;;
.              ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄||彡彡彡彡彡;;;
                ||   ||彡彡彡三三;;;
                ||   ||彡彡三三三;;
                ||   ||三三三三三;;
. ... . . .. . . .lTTTTTl.... ...  ,||   ||ミ|「」~ll三三;;;;
:::::::::::::::::/ ̄ ̄ ̄\:`;''-、l"'''i  ||ミl,,_ l|ミミミミ
:::::::::::/        \ x|\|';;、,,||ミミミ`ミミミミ;;
: : /            \ | :xx||ミミミミミミミミミミミ
/               _i\ヾヾヾヾミミミミミ;;
                i\キ\\::ヾヾヾヾヾ;;
          .::::::::::::::::::::::::::::\__ヽト、ヾヾヾヾ;;
          .::::::::::::::::::::::::::::::::!!:::::ii:::::\ヾヾヾ;;
          .::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\;;;;;



      「だが、乗換えをするたびに、人は増えていく」

183 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:18:39 ID:QCg5cLHs

「それに伴って、ホームもまた、大きく広がっていった」

  「僕は、帰ってきたのだ」

   : : : : : : : : : : : : : : : :: : : : : : : : : : : : : : : : : : : :::::::.......
"'- 、           廾_________廾.      i!゙~`'i      /
   "'- 、        「 ̄] 「 ̄] 「 ̄]   ̄ ̄..|!   |  ̄ ̄/  ,,-"
 :::::::::::::  "'- 、      `ー'' .`ー'' `ー''   .,__,.., |!   |   /  ,,-"    ,, - "     ,,,, -- ""
 :::::::::::::::::::::...  "'- 、             |::  | |!   | /  ,,-"  ,, - "    ,,,, -- "
 ::::::::::::::::::::::::::.......  "'- 、.          _,.,_, |::  | |!   |   ,,-" ,, - "  ,,,, -- ""
 ::::::::::::::::::::::::::::::::..... .. .   ヽ、..    ._.|:::.| |::  | |!   | ,,-"- ",,,, -- ""
 ::::::::::::::::::::::::::::::::: : : : : . . ... ヽ、.   :|.|:::.| |::  | |!   |         ,....... - ―
 :::::::::::::::::::::::::::::::::::: :: : : : : : : : :. 丶 i:|.|:::.| |::  | |!   |        |__ ,,....
 :::::::::::::::::::::::::::::::::::: : : : : .. .       i:|.|:::.| |::  | |!   |           |
 :::::::::::::::::::::::::::::::: : ::::......   _,..-  |.|:::.| |::  | :.|!   |      __|二| .. ,,,, _
 :::::::::::: ::::::: ::: ::::::::.  _,..-'''"      |__,i |::  | |!   | "'- 、  i''― -- ....,,,,__
 :::::::::::::::::::::: _,..-'''"               .|;:  | |!   |    "'- 、
   __,,.. .-‐-――-:ァェェ-.          ̄´ .|!   |       "'
  | .!    | ........:::;;;;| ̄ |´ |            |!   |
  | .!\ .. ;:i ..:: : ;;;;;;:|   | ,/           .;i!.,__,.|
  |__,|  ヽ ├――::::|__|/  . . . . . . . . . . . . . .
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :::::::.......
             . .. : :::: :: : :: : : :: :::: ::;: ;: ;;:;;; ::;;:: ::..:::::::::::::....

184 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:19:15 ID:QCg5cLHs

 「そのことを実感した途端のことだ」

           / ̄ ̄ \
            _,ノ ヽ、,_  \
          (●)(● )    |
          (__人___)     |  …っ。
          '、`⌒ ´  u  |
           |        |
           ヽ 、     イ
           ィヽ-ー ≦ノ7
    _, 、 -― ''"....:::::::::::::::::::::::::::ト、
   /.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::........--、
  丿.:::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::r::::: {
  r :::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`,::::i
 /.:::::::::::::::::::::::!:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',::i
/.:::::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V


    「僕は、彼女と話がしたくなった」


「それはとても強い衝動だった」

185 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:19:41 ID:QCg5cLHs

 「僕は下宿先にも寄らず、大きなカバンを抱えたまま、
                        大学の方へ向かった」

                    /) ̄ ̄\
                  /∠___ ヽ、,_ \
                 / / ,-イ)(= )!!! |
                 l / /(__人___)   |  …まだ、居るといいが…
                 l   ', `⌒ ´  u |
                 ',    ',      |
                  j    ノ      /|_
                _∠⌒ヽ j, _、___ ィ/::\__
            ___/ ...:::::::::::ヽV ̄ ̄ ̄:::::::::::::::::...´´''' 、、、 _
          /::::/ ...:::::::::::::::::::: 〉::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..... :::::..\
         | ::/ ...:::::::::::::::::::::::: /;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: /::::::::::::::: l



  「時間はちょうど、夕方にさしかかったところだったと思う」

186 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:20:14 ID:QCg5cLHs

「図書室の窓からは、ぼんやりとした灯りが漏れていた」

                               /| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                            /  | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                          /    | |          |||||||  |||||||
                          |    | |
                , ――――――┴――――――――――――――――――
              / .|
             /  .|     llllllllll          llllllllll
           /    .|    ______   ________
          /        |   |:::::::::::::::::... .. .i|   || ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|| Ц  γ |~ヽ
        /    /|  |   |:::::::::... ... . ' ..|   ||;;;;;;;;; |;;;;;;;;; |;;;;;;;;; ||    |  |  |
       /    /:::: |  |   |::::... .. . ''    |   || ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄||    |  |  |
     /    /...........|  |   |__..,        |   ||;;;;;;;;; |;;;;;;;;; |;;;;;;;;; ||    |_|_|
    /     , 1.|..,;;;, .,;;;,|  |   |;;.i|      |   || ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄||
  /    /:::| | |;;;| |;;;||  |   |;|::|      |   ||;;;;;;;;; |;;;;;;;;; | ;;;;;;;;;||
  |.  ,,;   |......i| | |;;;| |;;;||  |   |;|::|      |   || ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|| Ц  γ |~ヽ
  |  /|  .| . ...| | |;;;| |;;;||  |   |;|::|      |   ||;;;;;;;;; |;;;;;;;;; |;;;;;;;;; ||    |  |  |  ヾ;ゞ
ヽミゞ;;  |  .| . .| | |;;;| |;;;||  |   |;|::|      |   || ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄||    |  |  ヾゞ:;ヾ
ミ ゞ;;ミゞ;;.. ;. |  ..| | |;;;| |;;;||  |   |;|::|      |   ||;;;;;;;;; |;;;;;;;;; |;;;;;;;;; ||    |_|_| ヾ;/ゞ
ゞソミゝミゞ;;ヾ;:;;: . | | |;;;| |;;;||  |   |;|::|      |   || ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄||        ;ヾ ゞ;
ヾ;:;;:ヽミゞ;;ソゝミゞ;;. | |;;;| |;;;||  |   |;|::|      |   ||;;;;;;;;; |;;;;;;;;; |;;;;;;;;; ||      ヾ;;;ゞ ;;ゞ
ヾ;:;ミヽミゞ;;ヾ;:;   | |;;;| |;;;||  |   |;|::|      |   || ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|| Ц   ヾ;;; ;;ゞゞ:;ヾ
;ゞゝヽミ;ソミゝミゞ;;,| | | ̄ ̄.|  |   |~''|      |   ||;;;;;;;;; |;;;;;;;;; |;;;;;;;;; ||     ヾゞ:;ヾ ::ソゞ
ミゞ;;;:;ソソミヾ;:;;:   | | ̄ ̄.|  |   |~''|      |   || ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|| ゞ:;ヾ  ゞゞ:;ゞ:;ヾソ
iソ ヾ;: ;;:ヽ_;:ゞ   | |⌒l⌒|  |   | . |      |   ||;;;;;;;;; |;;;;;;;;; |;;;;;;;;; ||   ゞ:;ヾ;ヾ ゞゞ:;:ゞ;;
 ;i;:ヽ_;:ゞミゞ |    | |i.__|___|  |   |__,|      |   ||;;;;;;;;; |;;;;;;;;; |;;;;;; ヾヽ::ヾソ;;;: ;ヾ ゞゞ;.;:ヾ
;ゞil|;;;;;ヾヾヾゞ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ::ヾソ;;;:;ヾ ゞゞ:;:: ;;:ヾゞ ゞ;

           「それを見てから、自然と足が速くなってしまったのを覚えている」

187 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:20:40 ID:QCg5cLHs

 「僕が真っ先に向かったのは、彼女の席だ」

    「幸運にも、彼女はまだ大学に居た」

「僕を見て少しだけ驚いたあと、彼女は笑った」

     「笑ってくれたのだ」

             _
              (:.:.:.ヽノし'⌒ヽノ⌒ヽノ⌒ヽ
          ノしヘ,):.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:)
           ノ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:(.,ノヽ
       (:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.}
       _こ):.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.(ノ、
      (:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.  -   -  :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.)、
        ):.:.:.:.:.:.:.:.:.:.  ´       `  、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:(;_:..
        (_:.:.:.:.:.:.:.:.:/                 \:.:.:.:.:.:.:_;ノ}:.ヽ
.       ):.:.:.:.:, '                 ヽ:.:.:(:.:|:i|:.:.:.)
.       (_:.:.:.:.:/   / /  /     ヽ   \  ',:.:.:_)|i:|:.:(
         ):.:′   / /  /  l! l     l   l l  l:(:. :|:i|: :.:_)
         (:.:/l  l  l l l l  l l! l   l l   l l  l:.:_):|i:|:.(
         )l l  l  l l_l l  l l! l l_l_l_ l   / / /(: :/:i/:.:._)  おかえりなさい。
         (;,il ll l イ´l l l  l l! ´l l l l`ヽ / /:.:.:)/i:/:.:ノ
           川ヽ  ヽx≠=  l八ヽy≠=ミ / /:.:.(/:i/:.ノ〉
         《》从\《 f斧抃    斧抃》ムイハ:.:/i:/:.ノ/
.          /// l lハ 弋ツ     弋zツ  l l|iノ/乃》_:/
         /// ノノ 人 '''  ,   '' /\川 /:/}:{}:{
.        〈〈,,}三三三ニ=-  ー    /三ニ\}´ | }:{}:{
.          {三三三三三ニ=-=≦三三三三ム,;| {:}{:}
            }三三三三三《薔》三三三三二ニ}|   |
.           {三三三三三从乃三三三三三ニ{i;|   |
        {三三三三二ニ=ニ二三三三三三}八   |

             / ̄ ̄\
            /   _,.ノ  ヽ、_
            |    ( ⌒) (⌒)
           |    (___人__)
            .|         ノ__
            |     _/  ̄\ヽ   …ただいま、だろ。
               人、   '、/  ̄ ヽ '、
            _,/(:::::ヽ、  __'-r´ ̄ヽ  v
   _, 、 -― ''"::::::::::\ :::::::::::::::j_√    |
  /.:::::::゙:':、::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヘ    r、
 丿::::::::::::::::i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ゞニニ彡〉,
. i ::::::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::( :::::::::::::::::∧^
/.::::::::::::::::::::::!:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∧ :::::::::::::::::∧i
::::::::::::::::::::::::::|::::::::::::::\::::::::::::::::::::::::::::∧ ::::::::::::::::∧|
:::::::::::::::::::::::丿::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∧ :::::::::::::::::::v
:::::::::::::::::::::イ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∧ ::::::::::::::::::ノ

 「僕はきっと、また泣いてしまうだろうと確信していた」

   「それでも、僕は彼女と話がしたかった」

     「遠い場所に行ってしまった、二人のことを」

188 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:21:17 ID:QCg5cLHs

「彼女は、泣き笑いのような表情の僕を見ても、
         微笑んだまま、ただ話を聞いてくれた」


                                          " ;ゞ "; ;ゞ ;" ; ; ゞ ; ;ヾ ;
                                        " ;ゞ "ヾゞ; ;ゞ ;" "ゞ ; ; ; ゞ ; ;ヾ ;
                                     ;ヾ ;"/" ; ;ヾ ;ヾ  ;ヾヾ、ゝヾ;ゞ ヾ; ;"/
  _,,-'~''^'-^゙-、'~''^'-^゙-、                      ; ;ヾ ; " " ヾ ; " ; " ; ; ヾ" ;;" ヾ ; " ; ;ヾ
 ノ:::::::::::::::::::::::::::゙-:::::::::::::::゙-                    ヾ ;"; "i "; ;ヾ; ;ヾ; ;メヾ" "ゞ ; ; ; ; ;ヾ ; ; ヾ ; ヽ
i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::i_::::::::::::::::i                    ゛;ゞ ;" "ゝゞ ; ; ; ゞ ; ;ヾ ; ;ゞ ; "; ; ゞ゛; ; ゞ ;ゞ
:::::::::::::::::::;;;;;;::::__,,-''~i、;;;;;__,,''                     ヾ ;"; "i "; ;ヾ; ;ヾ; ;メヾ" "ゞ ; ; ゞ ; ;ヾ ; ; ヾ ;
ゞ:::::::::::::::::::::::|.レ/:::::::i |::::::i |                     ;ゞ ;" "ゝゞ ; ; ; ゞ ; ;ヾ ; ; ;" "ゞ; ; ; ゞ゛; ; ゞ
ヾ_:::::::::_,,-''ソ/::::::::::;/::::::::::;/                      ヾ ;"; "i "; ;ヾ; ;ヾ; ;メヾ "ヾ ;;ヾ;ヾ; ;" ; ;
 ゙-、_::::: i;;;;//::::::::,-'~/::::::::,-'                      ゛ ヾ;\;;ii ;iiメソ ヾ; ;ゞ "ゝゞ ; ;  ,, "
  ゙ヽy /_,,-''~y /_,,-''~                                 |;l!l| |l|
    |i::|    |ii:|                             ,,  "   |ill|| l|ll    ,,   "
   イ从    ノ从 ..,iルw,,.                            ' ノメ''"ゞメヽ''
"'"'" "'"'" "'"^ "'"'"'" ^ "'"'"'"~"'"'" "'"^ "'"'"'" ^ "" "'"^ "'"'"'"^ "'"'" """'"'" "'"'" "'"^ "'"

   「僕は、自分のことをあまりにも知らなかった」

 「こんなにも泣き虫で、弱いなんて、思ってもいなかった」


    「けれども、僕はもう、そのことを恥ずかしくは思わなくなっていた」





                   つづく

190 : ◆gDQ5bE8qg2 : 2012/03/14(水) 22:24:59 ID:QCg5cLHs
ということで、第四話「夏の庭」はここで終わりです。

今回は、湯本香樹実さんの同名小説を土台にさせてもらってます。
この小説は、大人も子供も考えさせられる、良い小説なんです。ほんとに。
書店などで見かけましたら、一度ご覧くださいませ…。

余談ながら、バッドエンディングの予感がするというコメントをいただいたのですが、
バッドエンディングにするつもりはないので…よろしければ、またお付き合いください。

では、閲覧、ありがとうございました!

189 : 名前なんて無いだろ常識的に考えて : 2012/03/14(水) 22:24:37 ID:0V8VV8LA
乙です。
BGMも内容も良かったせいで泣きそうだ。

191 : 名前なんて無いだろ常識的に考えて : 2012/03/14(水) 22:25:17 ID:qxU0kVVs
乙でした!
真紅はやらない夫のことをよく理解してるんだろうね。
二人の関係が羨ましく思えます。
BGMも、懐かしさとどこか気怠い雰囲気で、今回の話にマッチしていたと思います。

194 : 名前なんて無いだろ常識的に考えて : 2012/03/14(水) 22:32:58 ID:vosMBeEo
乙でした
BGMと相まって自分の幼い頃の記憶がよぎってこみあげるものが…
このスレは読む度に優しく切ない気持ちに包まれますなあ






湯本香樹実「夏の庭―The Friends (新潮文庫) 」


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